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信託型ストックオプションの発行手続

2021.09.30更新

信託型ストックオプションとは?

最近、耳にすることの多い信託型ストックオプションという形態のストックオプションですが、そもそもどういうストックオプションなのか、どのような特徴があるのかについてまず整理したいと思います。

まず、信託型ストックオプションとは文字通り、ストックオプションを信託する、すなわち発行会社はストックオプションを信託契約の受託者に発行する形で信託し(厳密には、発行会社のオーナーが委託者として金銭を受託者に信託し、受託者はその金銭を発行会社に払込むことでストックオプションの割当てを受けます)、受託者は発行会社がIPOした後のタイミング等で信託契約を終了させた上で(そのような条項を予め信託契約書に定めておく)、その際の従業員等に信託されておいたストックオプションを譲渡する、というスキームを採るストックオプションの事を一般的に指します。

つまり、受託者はストックオプションの割当てを受けるものの、あくまで受託者の立場でストックオプションを預かっているだけであって、真にストックオプションの割当てを受ける対象者は(IPOを果たした後等の)将来における発行会社の役職員になります。

信託型ストックオプションのメリットと留意点

信託型ストックオプションのメリットと留意点は、実務上最も普及している税制適格型ストックオプションと比較すると分かりやすいです。税制適格型ストックオプションは、発行会社がその時点で発行会社に在籍している役職員に付与します。

そうすると、ある時点までに入社した役職員はストックオプションを持ち、その時点以降に入社する役職員はストックオプションを持たないという状況が必然的に生じますので、税制適格型ストックオプションの場合は何度もその都度発行手続を採り、その時点で在籍している役職員に付与するといった方法を採らざるを得ません。

これは発行会社にとっては何度も別のストックオプションを発行する手間や複数のストックオプションを管理するコストが生じるばかりか、時間軸的に後に付与されるストックオプションほど行使価額(=バリュエーション)が上がってしまう(つまり、ストックオプションとしてのプレミアムが少なくなる)といったデメリットが存在します。

これに対し信託型ストックオプションは、発行手続自体は基本的に一度で済む上、バリュエーションの低い時期に発行したストックオプションを受託者の元でいわば冷凍保存しておくことで、上記のような税制適格型ストックオプションに内在するデメリットを回避できるといったメリットがあります。

その半面、現時点での実務上は税制適格型ストックオプションよりも大幅に発行時の費用(専門家に支払う報酬等)が高くつき、また受託者が個人の場合は受託者に死亡や事故が生じた場合に信託スキーム自体の存続が危ぶまれるリスクも存在します。

信託型ストックオプションの発行手続

信託型ストックオプションも会社法上の新株予約権であることに変わりは無いため、発行手続そのものは税制適格型ストックオプションとパラレルとなります。未上場会社であれば基本的に株主総会決議(及び取締役会設置会社であれば取締役会決議)と新株予約権関係契約の締結、登記手続を行えば完結します。

ただし、①信託型ストックオプションは新株予約権割当契約のみならず新株予約権信託契約も承認決議の対象に含まれると考えられる点(取締役会設置会社であれば取締役会決議《会社法362条2項1号。委託者=オーナー代表取締役であることが通常であるため、代表取締役は特別利害関係該当取締役{同369条2項}として決議には参加できないことに留意が必要です》、取締役会非設置会社の場合は新株予約権割当契約の承認決議《同243条2項または244条3項》と併せて株主総会決議に諮った方が簡便かつ無難であると考えられます)、②信託型ストックオプションは有償ストックオプションとして組成されることが一般的であるため、委託者→受託者→発行会社への信託財産たる金銭の入金手続が必要となってきます。

因みに、①は登記手続との関係では論点になることはありませんが、②については登記手続上「払込みがあったことを証する書面」(商業登記法65条2号)を添付することとの関係で、手続が適正に踏まれているか法務局の審査対象となる場合があります。

かかる「払込みがあったことを証する書面」には実務上、入金記録が印字された発行会社の銀行通帳のコピー(ネットバンキングの場合は明細画面のスクリーンショット)を提出しますので、バックデートは難しいことが注意すべき点です。

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