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信託型ストックオプションと登記手続との関係

2022.05.10更新

信託型ストックオプションと登記手続との関係

信託型ストックオプションであることが登記簿上公示されるか?

前回のブログ更新より期間が空きましたが、信託型ストックオプションと登記手続との関係について追加で記載したいと思います。前のブログで記載したとおり、信託型ストックオプションも会社法上の新株予約権(会社法236条以下)に他なりませんので、発行した以上は登記手続を行う必要があります。

もっとも、その新株予約権が「信託型ストックオプション」であることはもちろん、受託者の氏名等も登記事項とはならないため、登記簿上の新株予約権の記載は、それが一見して信託型ストックオプションであると判明するようなことはありません。

しかし、信託型ストックオプションは有償新株予約権として構成されることが通常であるため、その発行価額(オプション評価によって算定した、信託型ストックオプション発行時に受託者側から発行会社側へ払い込む金額)は登記事項となり(会社法238条1項3号、911条3項12号へ、915条1項)、その登記事項中に「なお、当該金額は、第三者評価機関である●●●が、一般的なオプション価格算定モデルであるモンテカルロ・シミュレーションによって算出した結果を参考に決定したものである。」などと記載する事も可能なように思われ、そのような文言まで登記簿の記載中に記載されている場合には、当該新株予約権は信託型ストックオプションであろうと推認することが可能ではあります(当事務所が登記申請を行う場合は、そのような記載は余事記載であると判断いたしますので、記載せずに登記申請をいたします)。

よって、結論としては「信託型ストックオプションであることは登記簿上公示はされないが、記載振りから信託型ストックオプションであることが一応推認されるケースはある」といったことになろうかと考えます。

信託型ストックオプションであることが、登記手続上法務局の審査対象となるか?

これも前回のブログで記載したとおり、信託型ストックオプションにかかる信託契約の内容は登記手続上、審査対象にはなりません。ですが、新株予約権に関する信託契約と新株予約権割当契約はリンクしており、その双方の契約が有効に成立して始めて信託型ストックオプションは割当て(会社法245条)の効力が生ずると考えるのが発行会社、委託者及び受託者全員の合理的意思に沿うものと言えます(つまり、信託契約が成立せずして、新株予約権の発行議案のみが承認可決された状態では新株予約権は有効に割当てされない)。

よって、その限りにおいて新株予約権発行登記に添付する株主総会議事録(取締役会議事録)上、新株予約権信託契約が有効に成立したこと、つまり新株予約権信託契約の締結も承認したことが読み取れる必要があるものと考えられます。

同様に、新株予約権発行登記申請に添付する株主リストの対象議案にも、かかる新株予約権信託契約の承認議案を含めておくことが無難な対応であると言えるでしょう(取締役会非設置会社の場合)。

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