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組織再編:ダブル公告を行う際、日刊新聞紙と電子公告のどちらかが良いか?

2021.04.12更新

債権者保護手続は、吸収合併や会社分割を行う際に必ず法務上検討すべき論点の一つ

吸収合併や会社分割(吸収分割または新設分割)を行う際に必ず法務上検討すべき論点の一つに債権者保護手続がありますが、債権者保護手続の原則としては「官報公告+会社にとって知れている債権者への個別の催告(通知)」として、会社法上は規定されています(会社法789条2項、799条2項)。

個別の催告をすべき債権者は、どの範囲における債権者なのかは会社法上は特に定められていない

しかし、官報公告は良いとしても、個別の催告をすべき会社にとって知られている債権者とは、一体どの範囲における債権者なのかは会社法上は特に定めておらず(この点について述べた戦前の古い判例はありますが、通信技術の発達状況など現代とは異なる時代背景下における判例であるため、先例としての意味合いを疑問視する見解もあります。)、金融機関等の会社にとって重要な債権者のみに催告すれば良いのか、極端な話、租税公課の支払先である税務署や公共料金の支払先である電力会社などもこの場合における債権者としてカウントすべきなのか、判然とはしません。

ダブル公告で不明確さに伴うリスクを100%回避

そこで、そのような不明確さに伴うリスクを100%回避するため、いわゆるダブル公告と呼ばれる、合併公告や会社分割公告(吸収分割公告、新設分割公告)を「官報公告+定款上の公告方法である日刊新聞紙による公告または電子公告」を行って適法に各債権者に対する個別の催告を省略する方法を採る(会社法789条3項、799条3項)ことも、実務上広く行われています。

ダブル公告の方法として、日刊新聞紙と電子公告のどちらが実務上やりやすいのか

それでは、ダブル公告の方法として、官報に加え(官報公告はいかなるケースであれ必須です)日刊新聞紙と電子公告のどちらが実務上やりやすいのか、私見を以下に記します。

電子公告の場合

まず、上場会社等、事実上電子公告を定款上定めることを強制されている会社は選択の余地なく電子公告となりますが、電子公告については債権者保護手続期間である最低1か月の間、法務省へ登録されている所定の電子公告機関の調査を継続して受ける必要があり、万が一インターネット上の接続が何らかの事情でダウンしてしまった場合にはその調査も中断してしまい、中断期間によっては電子公告が結果として不適法となってしまうリスクがあります。

また、当然ではありますが会社側で遺漏なく電子公告を自社のホームページにアップロードをしないと電子公告そのものが成立しませんので、管理部門がきちんと整っている会社でないと不向き、とも言えるでしょう。

日刊新聞紙の場合

日刊新聞紙を選択する場合、定款上の公告方法として具体的な新聞紙をどのように選択するかは原則として時事に関する事項を掲載する全国紙であればその新聞紙でも良く、また電子公告とは違って掲載日にのみ公告がきちんと掲載されれば継続的な調査は不要なので、手続的な負担は日刊新聞紙の方が電子公告より軽いと言えます。

もっとも、掲載費用については(新聞各社によって当然異なりますが)少なくとも数十万円程度は要し、電子公告よりも高くつく傾向にあります(電子公告も、アップロード自体は通信費用を除き費用は発生しないかと思われますが、電子公告調査機関の調査費用は要します)。

結論として

結論としては、ダブル公告を実施する際には

  • 上場会社等、管理部門体制が整っている会社は電子公告
  • それ以外の会社、特にダブル公告のため定款上の公告方法の変更から始めることが必要な会社は
    日刊新聞紙公告

が良いと言えるでしょう。

最後に

最後に、これらダブル公告をした後の吸収合併、会社分割による登記に際しては電子公告の場合は調査機関による調査報告書、日刊新聞紙の場合は当該掲載紙の掲載ページそのものが添付書面となりますので(商業登記法80条3号など)、掲載のタイミング及び掲載文面の内容は法務局の審査を受けることになります。

よって、ダブル公告の場合であっても、掲載手続や掲載文面の内容については慎重に検討する必要があることは言うまでもありません。

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