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組織再編:会社分割で債権者保護手続を省略できるパターン

2021.02.05更新

組織再編の法務手続スケジュールを組む時に一番のボトルネックは債権者保護手続

実務上、組織再編の法務手続スケジュールを組む時に一番の論点(ボトルネック)は債権者保護手続と考えられます。官報公告(ダブル公告を行うときは、日刊新聞紙など)の申し込みに営業日ベースで最低中10~12営業日程度、掲載から1か月間の異議申し出期間を設けなければならず、公告という性質上バックデートも効きません。

万が一、公告期間が1ヶ月以上取れなかった場合、その他定記載要件の欠如その他誤字脱字も含めて誤った公告の場合には登記は受理されず、取り返しのつかないことになってしまいます。

債権者保護手続を省略できるのであればそれに越したことはない

よって、債権者保護手続をやらなくてよい(省略できる)のであればそれに越したことはないとも考えられます。この点、合併の場合は債権者保護手続を省略できる例外はありませんが、会社分割の場合は会社法上、省略可能なケースがあります。なお、登記実務上もこの省略手続を適法にすれば会社分割の登記は問題無く受理されます。

異議を述べることができる債権者がいない場合、債権者保護手続自体を省略できる

会社分割の場合、会社法上それぞれ

  • 「吸収分割後吸収分割株式会社に対して債務の履行(中略)を請求することができない吸収分割株式会社の債権者」
  • 「新設分割後新設分割株式会社に対して債務の履行(中略)を請求することができない新設分割株式会社の債権者」

(会社法789条1項2号、810条1項2号)

が債権者異議を述べることが出来るとあるため、この反対解釈として会社分割後も依然として分割会社側に債務の履行を請求することができます。

具体的には吸収分割契約書(新設分割計画書)上で会社分割によって承継される債務を無しとする、または重畳的債務引受によって分割会社側も連帯債務とする旨記載すれば債権者は異議を述べることができないことなります。

よって、この場合は異議を述べることができる債権者がいない以上、債権者保護手続自体を省略することが登記実務上は先例によって認められており、実務上もこの先例を利用して債権者保護手続を省略する実例は非常に多いです。債権者保護手続を省略できるということは、冒頭に述べた債権者保護手続の要する期間を一切パスできるため、組織再編手続スケジュールの短期化を図ることが可能となります。

省略可能なパターンはあくまで分割会社側であって、会社分割承継会社側は省略できない

ただし、注意点としては、これまでに述べた債権者保護手続の省略可能なパターンはあくまで分割会社側であって、会社分割承継会社側は省略可能な例外は存在しないということです。よって、承継会社が存在する吸収分割の場合は手続の簡素化こと図れるものの、吸収分割承継会社側では必ず債権者保護手続が必要であるためスケジュールの短期化には寄与しません。

あくまで承継会社が会社分割前は存在しない新設分割の場合にのみ組織再編スケジュールの短期化をすることができることになります。

そして、新設分割の場合であっても、会社法上、債権者保護手続が省略可能なのは旧物的分割の場合のみであって、旧人的分割、つまり新設分割の効力発生と同時に新設会社が発行する株式をそのまま分割会社側の株主に現物配当として分配する場合は債権者保護手続の省略が認められないこと(会社法789条1項2号かっこ書き、同810条1項2号かっこ書き)に留意が必要です。

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