従業員の退職によるストックオプションの消滅登記をしなければならない時期
2021.04.18更新
以前に本ブログで、新株予約権(ストックオプション)発行後に従業員が退職したことを理由として新株予約権の消滅の登記をする際に、以下の2つの方法があると説明致しました。
- ①新株予約権(自己新株予約権)の消却を決定する取締役会決議(会社法276条)
⇒登記 - ②退職従業員から、その保有する新株予約権の全部を放棄する旨の放棄書の取付
⇒登記
今回のブログでは、上記従業員が退職したことを理由として新株予約権の消滅の登記をしなければならない「時期」について少し詳しく見ていくことにします。
②退職従業員から、その保有する新株予約権の全部を放棄する旨の放棄書の取付⇒登記の方法の場合
この場合はシンプルでして、退職従業員から放棄書の提出が会社側にあった日が新株予約権の消滅日(かかる新株予約権の全体の発行数の変更日)となりますので、その提出がなされた日から起算して2週間以内に登記申請を行う必要があります(会社法915条1項)。
退職による新株予約権の「消滅」は新株予約権の「行使」とは異なるため、行使日の属する月の末日から2週間以内に登記をすれば足りるとする同法915条3項1号の規定は適用されないことに注意が必要です。
①新株予約権(自己新株予約権)の消却を決定する取締役会決議(会社法276条)⇒登記の方法の場合
この場合、原則として新株予約権消却決議を行った取締役会決議の日が新株予約権の消滅日となりますので、当該取締役会決議の日から起算して2週間以内に登記申請を行う必要があります(会社法915条1項)。
では、実際に従業員が退職した後、取締役会決議の日までの期間はどれくらいの期間までであれば許容されるのか、裏を返せば、取締役会における新株予約権消却決議はどれくらいの頻度で行えば良いかが問題となります。
取締役会における新株予約権消却決議はどれくらいの頻度で行えば良いか
まず、結論としては、この点に関する会社法上の規制は特にありません。従業員の退職によって新株予約権の消却決議を行うことができる理由は、「従業員が退職した場合は新株予約権の権利行使をする権利を喪失し、会社は当該新株予約権を取得することができる」(無償取得とすることが大半です)旨のいわゆる取得条項付新株予約権(会社法236条1項7号)としていることが通常であり、取得条項に基づいて会社側が強制的に新株予約権を取得するか否かはあくまで会社側の任意であるといったことが挙げられます。
実務上は、半年に一回から1年に一回くらいの頻度で、それまでに退職した従業員分の新株予約権をまとめて取得条項に基づいて取得し、同じく取締役会決議にて新株予約権を消却し登記を行う、といった会社が多いかと思われます。