改正会社法下におけるストックオプション(SO)発行登記と行使価額を無償とするストックオプション発行登記
2021.06.11更新
取締役に対するストックオプションの発行は役員報酬と定義づけられることが明確化
改正会社法により、取締役に対するストックオプションの発行は役員報酬と定義づけられることが明確化されました(会社法361条1項4号)。
これにより、新規のストックオプションを一部でも自社の取締役向けに発行したい場合、たとえ上場企業(公開会社)であったとしても取締役会限りでストックオプション発行関連の手続を全て完結させることが出来ると解釈できる余地は狭まり、まずは株主総会においてストックオプション発行に関する役員報酬決議を行い(決議すべき内容は会社法施行規則98条の3に列挙されています)、その後に取締役会においてストックオプションそのものの発行決議(会社法238条、240条1項)及び割当決議(同243条2項)を行うという二段構えの法務手続が必要になってまいります。
上場会社等の取締役のみを対象とする場合、行使価額を無償とするストックオプションを発行することが認められるように
併せて、改正会社法により、上場会社等の取締役のみを対象とする場合、行使価額を無償とするストックオプションを発行することが認められるようになりました(会社法236条3項)。
この点、会社法改正前の新株予約権発行登記手続では役員報酬決議を経たかどうかに関する株主総会の提出は不要でしたが(役員報酬決議関連については法務局の審査対象外でしたが)、行使価額を無償とするストックオプションにかかる新株予約権発行登記を申請する場合においては、上記のストックオプション発行にかかる役員報酬決議をしたことを証する株主総会議事録の添付が求められることになりました(令和3年1月29日付法務省民事局通達参照)。
なお、改正会社法下においても上場会社等の取締役「のみ」以外の場合は行使価額を無償とするストックオプションの発行は認められず、例えば取締役のみならず従業員にも同時にストックオプションを付与したいと考える場合は行使価額は有償にせざるを得ません。
裏を返せば、依然として上場会社等の取締役に対しても従前のとおり行使価額が有償のストックオプションを付与することは当然に可能であり、登記も問題無く受理されます。
上記の内容を纏めますと
- 上場会社等の取締役のみを対象とする行使価額を無償とする新株予約権発行登記を刷る場合は、役員報酬決議をしたことを証する株主総会議事録の添付が必要となった
- 依然として上場会社等の取締役に対しても従前のとおり行使価額が有償のストックオプションを付与することは当然に可能であり、登記上も問題にならない
と言えます。