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商業登記を申請にする際に、印鑑の提出が任意化したことで実務はどう変わるのか?

2021.02.26更新

商業登記を申請にする際に、印鑑の提出が任意化したことで実務はどう変わるのか?

2021年2月15日から商業登記申請をする際に、印鑑の提出が任意に

2021年2月15日から、改正後の商業登記法及び商業登記規則が施行され、商業登記申請をする際に、印鑑の提出が任意になり(商業登記法20条の削除)、かつオンラインで申請書や登記の添付書面を提出する場合に、従来の商業登記電子証明書のほかにマイナンバーカードに紐づけられている個人の電子署名等でもオンライン申請時の電子署名として認められるようになりました(商業登記規則102条第6項の削除)。

簡潔に言えば、会社設立時や代表取締役の交代時などの登記の際に、従来はその登記申請と同時またはそれ以前に会社の実印に相当する印鑑を所定の「印鑑届書」に押印して、その印影を法務局側に登録してもらう必要があったのが、その必要が無くなった(=任意になった)ということになります。

商業登記手続を完全にオンラインで行う場合に実益がある

本改正の趣旨は言うまでもなく近時のデジタル化、脱ハンコの潮流を登記手続に際しても適用させようというものであり、商業登記手続を完全にオンラインで行う(=登記の申請書とその添付書面を完全にオンラインで法務局に提出する)場合は、実益があると言えます。

申請書の提出を書面で行う場合、印鑑届出は省略できない

他方、申請書の提出を書面で行う場合、または司法書士等の代理人に登記申請を委託する場合にその登記委任状を紙ベースの書面で提出する場合は、従来の取り扱いのままで印鑑届出は省略できないこととなります(改正後の商業登記規則35条の2)。

そうすると、今回の印鑑提出が任意になる改正で実益があるのは、例えば個人でマイナンバーカード等に紐づけられている電子署名をお持ちの方が大急ぎで会社を設立したいとき(印鑑作成をハンコ業者に発注する日数も惜しみたいとき)にとりあえず会社設立の登記のみ先行させるようなときに限られてくるでしょう。

少なくとも現在の日本社会においては印鑑の作成を全くしないまま過ごすことは困難

脱ハンコの潮流はこれからも進んでいくものと思われますが、少なくとも現在の日本社会においては印鑑の作成(=実印を法務局に登録すること)を全くしないまま過ごすことは困難である上、作成し続けずに過ごすこと自体に果たして意義があるかどうかといった問題もあります。

印鑑の提出はあくまでも「任意」であって、従来通り印鑑を提出することは今後も問題無く認められますので、大急ぎの際は印鑑の届出をとりあえずはスキップし、それ以外の場合は印鑑の提出を行った上で、登記の際には原則どおり書面での提出も活用するといったような場面の使い分けを行うのが最も適切かと考えられます。

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