組織再編:ダブル公告をするために日刊新聞紙(または電子公告)に公告方法を変えるタイミング
2021.02.05更新
組織再編手続においては原則として債権者保護手続が必須
合併、会社分割などの組織再編手続においては原則として債権者保護手続が必須となります(会社法789条、799条)。
債権者保護手続の内容としては①官報公告と②債権者に対する個別催告(個別に通知すること)の2つに分かれますが、②についてはその催告を行う債権者の範囲は明確でない場合も多く、実務上はある一定の債権額以上の債権者にのみ通知する、また会社にとって知れている債権者はいないとの決め打ちで一切個別催告はしない、として法務手続を進めることが一般的です(法務局は債権者は実体上本当にこれだけなのかを実質的に審査することはありませんので、登記実務上はこのような扱いで受理されます)。
上場会社グループ内等での組織再編の場合、ダブル公告を採用するメリットがある
しかし、疑義無く適法な手続を望む上場会社グループ内等での組織再編の場合は、いわゆるダブル公告を採用し、官報公告とは別に、③日刊新聞紙又は電子公告によって公告をすることで(この点を捉えてダブル公告と呼びます)、②の個別催告については省略を図ることがあり、このためには、予め定款上の公告方法をダブル公告を行う媒体による公告方法に変更しておき、かつその公告方法の変更登記もしておく必要があります(そうしないとダブル公告をできる根拠が無いため)。
ダブル公告は登記まで完了しておかなければいけない
ここでのポイントは、まず定款上公告方法を変更してあるのみでは登記実務上、ダブル公告を採用したことを前提としての合併登記や会社分割の登記は不可能であり(登記が受理されない)、登記まで完了しておかなければいけない点にあります。
タイミングはダブル公告による公告掲載日の前日までに登記申請をする
次に、では「予め」定款上の公告方法を変更しかつ登記まで行っておくとは具体的にどのタイミングまでであるのかといった点が問題となりますが、これは実際のダブル公告による公告掲載日の前日までに登記申請までしていれば登記実務上は受理されます。
公告掲載日までに登記手続の完了までしている必要はない
公告掲載日までに登記手続の完了までしている必要は必ずしもありません(後日、登記簿上反映されるのはあくまで登記を申請した日であり、登記完了日までは反映されないため)。これは過去(といっても会社法施行前の商法時代のものでかなり前なのですが)商事法務に掲載された論文(Q&A)にこの論点に関する回答が掲載されたことがあり、登記実務もこれに倣っているということが背景にあります。
よって、組織再編実務上、組織再編手続を短期間で進める場合はまずは官報とダブル公告(日刊新聞紙)の掲載申込をまず先行させ、申込から実際の掲載日までの間に急ピッチで上記の定款上の公告方法変更+登記手続を進めることも良くあり、この点が組織再編手続スケジュールを策定するときにキーとなるポイントとなります。
繰り返しとなりますが、債権者保護手続は100%バックデートが効かないため、特に慎重に検討する必要があると言えるでしょう。
組織再編法務支援
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